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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)3335号・昭55年(ワ)5319号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一本件土地がもと登芽雄の所有であつたことは当事者間に争いがないところ、原告は昭和五四年九月三〇日、登芽雄から本件土地の二分の一について贈与を受け、所有権を取得した旨主張するので、この点について検討する。

<証拠>によると、次ぎの事実が認められる。原告は、昭和五四年三月頃友人の紹介で登芽雄と知り合い交際を始め、同年五月頃には結婚することを前提にする程度に進行し、登芽雄は原告を実家の親族に紹介し、原告は登芽雄を父母に引き合せ相互に近いうち結婚する意思が固まり、頻繁に交際を重ねていた。同年九月同居していた原告の母が海外旅行に出発したが、その際、登芽雄に後をよろしくと依頼したこともあつて、登芽雄は原告宅に止宿し、自分の経営する会社に出勤する程原告と親密な間柄となつた。このような関係にあつた登芽雄は、九月三〇日原告宅で将来の生活について話し合つている時、本件土地を原告と登芽雄の二人の所有とし、その地上に二人名義の家を建てて、住み、土地と一緒に両人名義にする旨話しをし、原告は喜こんで登芽雄の右提案に同意した。その後同年一〇月九日頃、登芽雄は原告を本件土地に案内し、現地を示したうえ、直ちに二人の所有名義に登記してもよいが、どうせすぐ家を建てるのだからその時土地と家を同時に両人名義に所有権の登記をしようと話しをし、原告もこれを了解した。しかし、この贈与については登芽雄が死亡する迄、書面として作成されなかつた。

右の事実によると、登芽雄は昭和五四年九月三〇日原告に対し、本件土地の所有権の二分の一を贈与することを約し、原告がこれを承諾して両者間に贈与契約が成立したことが認められる。

<証拠判断略>

二登芽雄と原告間の前認定の贈与契約は、書面によらないものであることは当事者間に争いのないところ、被告らは抗弁として右贈与契約は自然債務である旨主張するが、前認定の事実によると、これが被告主張の自然債務に当らないことは明らかである。次ぎに被告らは右贈与契約を昭和五六年二月一二日の本件口頭弁論期日において取消す旨意思表示をしたと主張し、この事実は原告の認めるところである。

三そこで原告の再抗弁について判断する。

1 前記一において認定した事実に、<証拠>によると、前認定のとおり、登芽雄が原告を本件土地に案内した後の昭和五四年一〇月一四日、登芽雄は原告と二人名義の新居を建てるため旭化成ホームズ株式会社の新宿西口営業所展示場へモデルハウスを見に行き、同社の社員水元良一からモデルハウスやローンの支払方法の説明を受け、水元氏がその後登芽雄に電話をした際、建築のことは一切原告に委せてある旨返答したので水元氏は原告の住所宛にモデルハウスの設計図を送付したことが認められる。

2 原告は前記一ならびに三1において認定した事実は、登芽雄より原告に対し占有の移転があつたものであり、本件土地の現実の引渡しを終えたものである。仮りにそうでないとしても占有改定の方法により引渡しがなされたものである。いずれにせよ右のとおり本件土地は登芽雄より原告に対し、引渡しがあり、民法五五〇条に規定する履行を終えたものであつて被告ら主張の取消は効力がないと主張する。土地や建物等の不動産が、書面によらずに贈与された場合、その履行が終つたといえるには、該不動産の登記が完了したか、所有者から権利証、委任状、印鑑証明書等登記に必要な書類が交付されたか或いは該不動産の占有が相手方に対し現実に引渡され又はこれと同視し得る程度に至ることを必要とすると解すべきである。これを本件についてみると、原告主張の各事実の認められることは前認定のとおりであるが、右認定の全事実をもつてしても未だ本件土地が登芽雄より原告に対し現実の引渡しがあつたものとは認めるに充分でなく又占有改定とも解し難い。いずれにせよ本件土地についての履行が終つたものとは認められない。

3 かえつて、<証拠>によると、登芽雄の水元氏に対するものはいわゆる下見ないし事前の相談の段階にとどまり、具体的な設計打合せ迄に至らず、建築請負契約やローンの設定契約が行なわれていないこと。本件土地の権利証や委任状等の書類が登芽雄より原告に交付されていないこと。本件土地は、当時一〇数名の者に対し自動車置場として貸与中で、賃借人に立退き等の要求や交渉も一切なく、従前と同様に使用されていたこと。右駐車場の管理は訴外大和産業株式会社が行い、登芽雄生存中は、同人に対し賃貸料の送付があり、同人の死亡後は、被告信行に支払われていて、同社に対し、登芽雄より地上に建物を建てる前提としての使用変更の話しがなかつた。ことが認められる。これらの事実は、登芽雄の生存中は同人の占有支配下にのみあつて、原告にはなく又その死亡後にも原告に移転した事実のなかつたことが認められる。 (岡田潤)

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